デーモン・コア 再臨界を理解するために
2011-08-21


ダリアンの命の奪ったロスアラモス国立研究所のデーモン・コアは、翌1946年、カナダ出身の物理学者ルイス・スローティン(1910〜1946)の命をも奪います。実験の形こそ違いますが、やはり臨界によって発生した大量の放射線による急性放射線障害でした。

さて、ここで一つの疑問が生まれます。連鎖的核分裂反応(臨界反応)を起こすためには、プルトニウム239なり、ウラン235なりに中性子が飛び込む必要があります。じゃあ、最初の核分裂を起こすための中性子はどこから来るのかというものです。
実は、プルトニウムやウランは、自然に核分裂を起こして中性子を発しているのです。これを自発的核分裂(または自発核分裂)と呼びます。
以下に、1kgのプルトニウムとウランが1秒間に自発的核分裂を起こす確率を記します。
●プルトニウム239: 7.01回/秒・kg
●プルトニウム240: 489,000回/秒・kg
●ウラン235: 0.0056回/秒・kg
●ウラン238: 6.93回/秒・kg
プルトニウムの塊には、プルトニウム239だけでなく、必ずプルトニウム240が含まれています。プルトニウム240は比較的高い頻度で自発的核分裂を起こすので、最初の1個の中性子は簡単に生まれます。
ウランの方は、ウラン235は自発的核分裂の確率は低いのですが、必ず一緒に存在するウラン238は、十分に高い確率で自発的核分裂を起こします。1999年9月30日に起きた東海村JCO臨界事故は、ウランによるものでした。臨界状態への引き金を引いたのはウラン238の自発的核分裂だったと考えられます。

なお、原爆や原子炉では、連鎖的核分裂反応をより確実に、均等に起こさせるため、別に中性子源を用意しています。

デーモン・コアの事件は、いとも簡単に臨界が起きることを教えています。
問題は、「濃度」と「大きさ」と「形状」です。
よく、炉心溶融(核燃料の溶融)と臨界(再臨界)が混同されますが、これはまったくの別物です。核燃料が溶けていなくても再臨界は起きるのです。そして、臨界状態になれば、大量の中性子線が飛び出し、近くにいる人は確実に死にます。また、ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といったやっかいな核分裂生成物が、これまた大量にばらまかれます。

この記事はここまでとして、次の記事で、今後、福島第1では核燃料の溶融や再臨界が起きる可能性があるのかを考えていきます。


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