再処理施設って何?
2011-09-07


使用済み核燃料の再処理施設を巡る興味深い報道があったので、取り上げておきます。
「福島の核燃料、仏が引き取り打診」 菅前首相に聞く

フランスのフィヨン首相から菅前首相に、「福島第1にある使用済み燃料(プールで保管中の3108体)を引き取ってもよい」という打診があったというのです。大胆なトップセールスが行われたのは5月。フランス・ドービルで開催されたサミットでのことでした。
この話、直接的には、福島第1の収束に関わると見えますが、実は日本政府に対して原子力政策の根幹に関わる問題を突きつけ、私たちには「原子力」に立ち向かう基本姿勢を問いただしています。

本ブログで既報通り、福島第1だけでなく、日本の原発は、どこも使用済み核燃料で満杯です。フランス、イギリスでの再処理は契約が切れ、国内での再処理も目途が立っていません。【使用済み核燃料はどこへ?
そこへ原発大国フランスから強烈な売り込み。欲しいのは使用済み核燃料に含まれるプルトニウムと、原子力技術の世界へのアピールでしょう。一方、日本の経産省内では、核燃料サイクル計画が根底から崩れるとして、反対論が強いそうです(プルトニウムがなければ核燃料サイクルは想定すらできません)。まずは、この期に及んで、核燃料サイクルなんていう馬鹿げたプランに固執し続けている経産省に呆れます。ただ、この一件、正しく理解するためには、少し勉強が必要です。反対派の一部には、「原発のゴミ=使用済み核燃料をフランスが受け入れてくれるって言ってるんだから、あげちゃえばいいじゃん」という意見もありそうですが、事はそう簡単ではありません。

「再処理」なんて言われると、何となく聞こえがよいですが、その実態は「プルトニウム抽出工場」です。
世界初の再処理施設が稼働したのは1944年。アメリカのハンフォード核施設でした。人類が核の恐怖と同居を始めたその時代、すでに再処理施設は登場していたのです。
目的は長崎に投下する原爆の製造。広島原爆の核分裂物質がウラン235で、長崎原爆がプルトニウム239だったことは多くの方がご存じの通りです。

で、何からプルトニウムを抽出するのか… それが今で言う使用済み核燃料です。1944年当時、発電用原子炉はありませんから、使われたのは、とにかくプルトニウムを作るための原子炉=プルトニウム生産炉でした。とは言え、基本原理は今の発電用原子炉となんら変わりません。原料は、ウラン238が主体で数%のウラン235を含む低濃縮ウラン。中性子をぶつけ、ウラン235の連鎖的核分裂反応を起こします。その時に、余った中性子がウラン238に吸収され、プルトニウム239になるのです。ただ、それだけでは原爆に使える純度の高いプルトニウム239を得ることはできません。
そこで、「低濃縮のプルトニウム(=使用済み核燃料)」を再処理施設に持ち込み、プルトニウムだけを抽出したのです。再処理工場は核兵器と切っても切れない関係、いや、核兵器のための技術なのです。

さて、話を先に進めましょう。再処理工場では、どうやってプルトニウムを抽出するのでしょうか…
使用済み核燃料には、燃え残りのウラン235、ウラン238、核分裂生成物(セシウム137やストロンチウム90など)、プルトニウム以外の超ウラン元素(アメリシウムやキュリウム)、そして、プルトニウム(大半がプルトニウム239)が含まれています。
これを濃硝酸に溶かすなどして、プルトニウムとウランを取り出すのです。残りはガラスで固めてガラス固化体というものにします(崩壊を続ける核分裂生成物や超ウラン元素を濃縮したようなものですから、強烈な放射線を発し、とても人間が近づける代物ではありません)。


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[原子力の仕組み]

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