NHK『あさイチ』の怪
2011-10-30


NHK総合、朝の人気番組『あさイチ』で「放射能大丈夫?食卓まるごと調査」が放送されたのは10月17日のことです(私は、偶然だったのですが、リアルタイムで見ました)。
福島の2家族を含む全国7家族の一週間分の食事に含まれている放射性セシウムの量を計測(方法は、毎食一人前ずつ多く作ってもらい、それを分析に回す陰膳(かげぜん)法)。結果的には、5家族で一週間の間に1回ずつ5〜9ベクレル/kgが検出されたというものです。
当ブログでも、その日にアップした「低線量内部被ばく/「毎日少しずつ」の恐怖」 で、番組内容に簡単に触れました。

「厳密な検査でも、一部の家庭で微量の放射性セシウムしか出なかった。福島でさえも」という、このレポートの反響は大きく、「これで安心して子供に食事を食べさせられる」といった声が上がりました。

ところが、一方で、「データが変だ」という声も広がりました。当ブログにも、『あさイチ』のデータに関するコメントを頂き、さっそく、NHKのホームページに上がっているデータを見直してみて、ビックリ。このPDFです。

まず第一の疑問は、7家族7日分=延べ49日分の食事を調べ、5日分から5〜9ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されているのですが、5件ともセシウム134かセシウム137のいずれかしか出ていないのです。
福島第1原発からの放出量を見ると、セシウム134(半減期:2年)が1.8京ベクレル、セシウム137(半減期:30年)が1.5京ベクレル(京は兆の1万倍)です。半減期の関係で、セシウム134の方が多少減りが早いのですが、現状では環境中にある福島第1由来のセシウム134とセシウム137は、ほぼ同量と見られます。おまけに、化学的な性質はまったく一緒。比重や融点、沸点なども一緒です。従って、2種類の放射性セシウムは、同じように、一緒に混ざったまま拡散していったと考えるのが妥当です。
下の地図は、文科省が発表した航空機モニタリングのデータです(福島第1の北側30キロ〜60キロ圏)。セシウム137とセシウム134の広がり方も土壌への沈着量も、ほぼ同じです。
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また、植物にしても、動物にしても、どちらかの放射性セシウムを選んで吸収することはできませんから、両方あれば、両方を吸収。私たちが食べる食品の中に入っていきます。
その証になるのが、食品別に放射性物質の濃度を発表している食品流通構造改善促進機構のデータです(シイタケなどを見ると分かりやすいです)。2種類の放射性セシウムのうち、片方だけが検出されるのはまれで、ほとんどの場合、両方同時に検出されています。
しかし、『あさイチ』では、5例が5例とも揃って片方だけなのです。これは、検査機器は大丈夫なのか?と疑って当然です。

もう一つの大きな疑問は天然に存在する放射性物質であるカリウム40の値です。延べ49日分のデータは、一日平均で250〜470ベクレル/kgの間に入っています。しかし、通常、食品に含まれるカリウム40の濃度を見てみると下の表のようになります。
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海草類などで高いものがありますが、食品全体を見れば200ベクレル/kgを越えるものはわずかしかありません。特に主食系の穀類では、ここに上げただけでなく、参考にした『家族で語る食卓の放射能汚染』のすべてのデータを見ても中華麺の99ベクレル/kgが最高で、100ベクレル/kgを越えるものはありません。

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