4号機 核燃料プールの危険性【1】
2012-03-10


この時、原子炉ウェルが水で満たされていたのは、まさに偶然。燃料集合体の移動は終わっていましたから、ウェルに水を張っておく必要はなかったのです。
実際、3.11の4日前、3月7日には、水を抜く予定なっていました。ところが、圧力容器内の改修作業が不手際で遅れたため、ウェルは水を張ったままになっていたのです。

次の図に進みましょう。4号炉で起きた事故の流れを示しています。
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地震と津波の影響で全電源喪失。核燃料プール内の冷却水が循環しなくなり、水温は見る見る上昇。蒸発も進み、核燃料が水面に顔を出す直前まで事態は進行しました。Aの状態です。
ところが、プールとウェルの間にあるプールゲート(水門)は、常にプールの方が水圧が高いという前提で作られています。その結果、プール側の水量が減るに従い、ウェル側からの水圧に耐えきれず破損したのです。
ウェルから約1千トンという大量の水が核燃料プールに流れ込みました。これは、原子炉の設計上からは、まったくの「想定外」の出来事でした。
この時、ウェルから水が流れ込むことがなければ、ほどなく、核燃料プールは完全な空焚き状態になり、核燃料溶融、さらには臨界という事態になったでしょう。
現在の比ではない大量の放射性物質が撒き散らされ、首都圏からも住民が避難しなくてはいけない最悪の事態に進んでいた可能性が高いのです。それは、間違いなくチェルノブイリを越える人類史上最悪の事故です。

●朝日新聞に関連記事あり

次のグラフは、東電が2011年12月2日に公表した「福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」の添付資料にあるものです。
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分かり難いグラフなので、要点をかいつまんで説明しましょう。
3月14日あたりから水温が90℃に達しています。核燃料の附近では沸騰状態でしょう。水が大きく減ったのが3月15日。その深夜、プールゲートが壊れ、ウェルから水が流入したようです。これにより、満水からマイナス4メートルから3メートルくらいで、水位低下のスピードが落ちています。
しかしそれでも、水位は徐々に下がっていきました。4月21日の段階では、核燃料の頭頂部から1.5メートルにまで迫っています。その後、これまた偶然なのですが、4月22日に、注水によって高くなったプール側からの水圧によって、プールゲートが閉まったのです(完全に閉まったかどうかは分かりませんが、少なくとも水がプールから流れ出しにくくなった)。これによって、注水された水が、プールにだけ留まるようになったので、水位が上がりやすくなったとされています。その後、砂上楼閣的ではあるのですが、一応、安定した状態にはなっています。

しかし、4号炉が最悪の状態にならないで済むために、いくつの偶然があったでしょうか?
1. 原子炉ウェルに水があったこと。
2. プールゲートが、ウェル側からの水圧で破損したこと。
3. プールゲートが、プール側からの水圧で閉まったこと。
この三つの偶然のうち、一つでも起きなければ、どうなっていたのか?それを考えると背筋が寒くなります。

今、福島で避難している人たち、高線量下での生活を余儀なくされている人たち、あるいは、内部被ばくの恐怖の中で暮らす私たちにとって、「幸い」という言葉があまりに不似合いです。しかし、あえて言いましょう。上記の三つの『不幸中の幸い』があったからこそ、結果的に、福島第1は『人類史上最悪の事故』になるのを辛うじて逃れているのです。
最悪のシナリオまで、あと一歩。まさに危機一髪だったのです。

では、危機は去ったのか?
そうではありません。

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[福島第1事故詳細]

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