■大量の使用済み核燃料があった理由
下の表は、福島第1の原子炉および核燃料プールにあった燃料集合体の数です。60本から74本の燃料棒を束ねて、一体の燃料集合体にするわけですから、一つの原子炉に数千本の燃料棒があることになります。
表を見ると、4号機の核燃料プールに、1,331本という飛び抜けて多い数の使用済み燃料集合体があったことが分かります。
3年間の使用を終えて、原子炉から出てくる使用済み燃料集合体は、毎年約183本です。今回は、圧力容器の改修作業のために、使用途中のものもすべて取り出していたという事情もありますが、多いのはその分だけではありません。2010年以前に取り出された使用済み燃料集合体が、プールの中に783本もあったことになります。
使用を終えたばかりの核燃料は、放射線量も崩壊熱もきわめて高いので、原子炉の直近にある核燃料プールで貯蔵するしかありません。ただ、そのままではプールがすぐに一杯になってしまうので、一年後を目途に、発電所内にある共有プールに移されます。もちろん、水に漬けたままの移動という難しい作業です。その後、そこで数年間冷やしてから再処理、というのが電力会社と日本政府の目論見でした。
しかし、
●東海村の再処理施設は規模が小さすぎて役に立たない。
●フランスとイギリスに委託していた海外での再処理は契約切れ。
●六ヶ所村再処理工場は、トラブル頻発で稼働の見通し立たず。
…という状態で、使用済み核燃料の行き場がなくなっているのです。ちなみに、六ヶ所村はまったく見通しが立っていないのに、使用済み核燃料の貯蔵量だけは、すでに90%を越えています。また、各原発の貯蔵能力も限界に近づいています。
そういった背景があって、行き場を失った多くの使用済み核燃料が、4号炉の核燃料プールに貯蔵されていたのです。
■使用済み核燃料と新核燃料 その怖さの違い
さて、核燃料プールには、使用済み核燃料と交換するための新核燃料も貯蔵されています。ここでは、使用済み核燃料と新核燃料では、危険性がどう違うのか、それを考えていきたいと思います。
新核燃料は95.9%がウラン238で、残りの4.1%が連鎖的核分裂反応を起こすウラン235です。新しい燃料なので、もの凄い放射線を発していそうな気がしますが、実はそうではありません。ウラン238の半減期は44億6千万年。ウラン235は7億年。少しずつアルファ崩壊はしていますが、その線量は限られたものです(近くに長時間いるのは危険です)。
また、崩壊熱もありません。ですから、新燃料の輸送に使う容器には、水も放射線の遮蔽材も使われていません。
●参照:
BWR用燃料集合体輸送容器
では、新核燃料の何が怖いのか…
臨界の起きやすさです。ウラン235の濃度が高いので、使用済み核燃料に比べて、少ない量で臨界に達します。
逆に言えば、臨界を起こさないために、核燃料は細い燃料棒に小分けされているとも言えるのですが、燃料棒の被覆管が壊れて核燃料そのものが一か所に集まったら、あるいは、燃料棒同士の距離が近づきすぎたら、それだけで臨界は起きるのです。
一方、使用済み核燃料の怖さは、崩壊熱と放射線です。たとえば、連鎖的核分裂反応が止まってから数年以内に、循環する水による冷却が止まると、みずから発する崩壊熱で溶け出します。溶け出した核燃料が、ある量、ある形で集まれば、使用済みと言えども、臨界に達する恐れがあります。これは、事故を起こした福島第1にだけ言えることではなく、世界中、すべての原子炉がそうなのです。
比較のために、
セコメントをする