南相馬の黒い物質
2012-03-10


テレビのニュースでも報じられたので、ご存じの方も多いと思いますが、「南相馬の黒い物質」の話です。

南相馬の地元の方が、所々の地表面に広がる黒い物質に線量計を近づけて測ったところ、最大31,682cpm(そのまま換算すると、何と94.9μSv/h!)というきわめて高い放射線量が検出され、一部は、プルトニウム239などの超ウラン元素から出ているアルファ線ではないかと疑われた一件です。

●「南相馬の黒い物質」を報じる海外のニュース

アルファ線の方は、専用の機器で測定したところ、一応、不検出となったのですが、「黒い物質」に放射性セシウムが高濃度で蓄積しているのは、間違いのない事実でした。
神戸大学の山内知也教授が高純度ゲルマニウム半導体検出器を用いて計測したところ、セシウム134が485,252Bq/kg、セシウム137が604,360Bq/kg。放射性セシウムの合計で109万Bq/kg。この100万Bq/kg以上という数値は、ゴミ焼却場から出た焼却灰で言えば、コンクリートに固めても埋設できない高いレベルです。こういったものが、南相馬、いや南相馬だけではないでしょう、福島第1から数十キロ圏内には、たくさんあると考えられます。

この「南相馬の黒い物質」は、東北大植物園の鈴木三男教授によって、「らん藻(らんそう)」であると確認されました。らん藻は生物学的にはバクテリアの仲間。私たちの一般的な感覚としては、細菌と植物の中間のような存在です。普段、「藻(も)」とか「苔(こけ)」と呼んでいるものの多くが、実はらん藻の仲間。観賞魚を飼う水槽の内側に付く緑色の藻も、海で赤潮を起こすのもらん藻です。

この、きわめて日常的に私たちの周りにある「らん藻」に、放射性セシウムが高濃度に蓄積しているのです。理由は、らん藻がみずから生き延びるために、空気中や水中、土中から積極的に栄養分としてカリウムを吸収しようとするからです。生体は、化学的な性質が似ているカリウムとセシウム(放射性であろうとなかろうと)を見分けることができませんから、「らん藻」が生きようとすればするほど、その体内には、どんどん放射性セシウムが溜まっていくのです。

ならば、らん藻に近づいたり、触ったりしなければ大丈夫?話は、そう簡単ではありません。
水がなければ活性化しないのがらん藻です。じゃあ、水が切れたら、土にへばりついて、死んでしまうのか?そうではありません。乾燥状態になると、細かく割れて、風の力で空中に舞い上がり、運良く水のある場所に落ちたら、そこで息を吹き返します。そこに、また放射性セシウムがあれば、さらに蓄積が進むということです。また、胞子によっても繁殖しますので、放射性セシウムに汚染されたらん藻の広がりを抑えることは、事実上、困難です。
そして、空中に舞い上がったらん藻やその胞子を私たちが呼吸によって吸い込むのは、まれな事ではありません。
らん藻の生きようとする力によって、私たちは放射性セシウムによる内部被ばくの恐怖に晒され、さらに、予想もしなかった場所に、あらたなホットスポットが作られていきます。

ここまで書いて、一年間に渡って、すっかり騙されていたことに気がつきました。「セシウムは、土壌との親和性が高いので、地面に落ちると土と強く結びついて、再度、大気中に舞い上がることはない」。国や多くの研究者が言ってきたことです。
まったくの嘘でした!
実際には、放射性セシウムを土より先にらん藻が吸収している場合があるのです。また、一旦、土が取り込んだ放射性セシウムをらん藻が吸い上げ、乾燥が進めば、大気中に舞い上がっていた、いや、今も舞い上がっているのです。
そのらん藻の汚染度は100万Bq/kgレベル!このような場所に、今、南相馬の人たち、いや、福島の多くの人たちが住むことを強制されています。本来ならば、人が住んでよい場所ではありません。いったい、誰がどう責任を取るつもりなのか…

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