広範なエリアで染色体分析調査を!
2012-07-11


見るからに異常な状態。放射線によって切断された染色体が、間違った修復を行った結果です。もちろん、これでは正しい遺伝情報は伝わりません。こういった染色体異常はガンなどを引き起こします。

DNAの損傷と違って、染色体の損傷は、顕微鏡による分析で確認することができます。
…ということは、甲状腺細胞の染色体を顕微鏡で調べれば、ヨウ素131による被爆があったかどうかは、明確に分かるし、甲状腺ガンの危険性も予測できます。
しかし、国や調査機関は染色体を調べようとしません。なぜ?ひと言で言えば、面倒だから。染色液と顕微鏡があればできる簡単な検査なのですが、一人あたり数百の細胞を調べて、染色体異常の数や種類を目視でカウントする必要があるのです。人手と時間がかかります。
しかし、その言い訳は通じません。国はこの原発事故に大きな責任を負っているのです。そして、内部被ばくの恐怖にさらされながら生きている福島の人たちには、何の落ち度もないのですから。

染色体分析は、手間は掛かりますが、ホールボディカウンターのような高価な機器は必要としません。尿検査のような大きな誤差もありません。広いエリアで、たくさんの人の染色体異常の状況をつぶさに掌握できれば、ヨウ素131による内部被ばくの広がりを正確に知ることができます。

結果、残念ながら多くの染色体異常が発見された人に関しては、健康状態を注意深く観察し適切な対策を講じることで、できるだけ発症しないようにできるはずです。仮に発症しても、重症化する前に抑え込める可能性が高まります。悲劇を少しでも減らすことは不可能ではありません。

これまで、放射線被ばくによる染色体異常に関する研究がなかったのかというと、実はそんなことはありません。
チェルノブイリ事故による子どもの甲状腺ガンの増加に関して、DNAや染色体の損傷との関連を研究した論文があります(かなり専門的な内容ですが)。

医師の一分『低線量被曝による小児の甲状腺癌患者の染色体7q11異常』

Gain of chromosome band 7q11 in papillary thyroid carcinomas of young patients is associated with exposure to low-dose irradiation(英文)

チェルノブイリの苦い教訓。その研究成果があるのに、少しも生かそうとしない日本政府。大きな憤りと怒りを感じざるを得ません。

ただちに、福島を中心とする広範なエリアで、甲状腺細胞の染色体分析調査を実施すべきだと考えます。
いや、本当の事を言えば、甲状腺だけでなく、赤血球や筋細胞、造血細胞の染色体分析を実施すれば、いま、闇の中に隠されようとしている被ばくの実態が明らかになるはずなのです。
それは、多くの人たちをギリギリの所で救う助けになるでしょうし、これから先、私たち日本人が、いや、人類が原子力とどう向き合うべきなのかを教えてくれる貴重なデータになるはずなのです。

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