汚染水問題に出口はあるのか?(下)
2013-09-01


ボルトで接合し、シリコンゴムのパッキンをはさんだだけの組み立て式鉄製タンク。中に入っているのは塩分を含んだ高濃度汚染水。鉄だから錆びます。シリコンゴムは放射線と太陽光線で腐食。
こんな誰にでも予想のつくことが、東電には分かっていなかったのでしょうか?漏れるのは織り込み済みで、当面、世の中の厳しい目を交わすために、もっとも安い方法を選んだのではないか… これはもう疑いの域ではありません。

東電経営陣の頭の中には、「福島第1を環境から切り離して汚染拡大を防ぐ」とか「放射性物質の海への流出を絶対に阻止する」といった考えはありません。漁民の生活も作業員の安全も頭の片隅にすらないのでしょう。「最終的に海に流してしまえば、太平洋が薄めてくれる」程度にしか考えていないのです。

汚染水問題は重大です。放射性物質で地下水を汚し、海を汚すことは、大きな生態系を取り返しのつかない状態にしてしまうことを指します。もちろん私たちの命や健康にも直接関わってくる問題です。
安倍政権は「国の責任で抜本的対策を取る」などと、得意の空手形を切っていますが、そう簡単にはいかないでしょう。
いくつかの設問をあげて考えていきましょう。

●今ある汚染水をどうするのか?

にわか作りのタンクにため込まれている汚染水は、今の段階で33万トンにも及びます。今後も汚染水漏れは次々と起きるでしょう。そういう造りのタンクですから。ここにある汚染水を恒久的な貯蔵施設に移さなくてはいけないのに、その方策は見えません。

政府や東電が汚染水対策の切り札としているのが、汚染水から約60種類の放射性物質を取り除くことができるという多核種除去設備(ALPS)。しかし、トラブル続きで、ALPSそのものからの汚染水漏れも明らかになったばかりです。
仮にALPSがまとも稼働したとして、汚染水から取り除いた放射性物質はどうするのか?これもまた具体案なしです。
放射性物質は中和も解毒もできません。どんな形で存在しても、放射線を発し続けるのです。
さらに問題なのは、ALPSでも取り除けないトリチウムという放射性物質です。分かりやすく言えば放射性の水素。東電の目論見は、ALPSで処理した水を海に放出するというものですが、高濃度のトリチウムを含んでいるので、絶対に許されません。
トリチウムについては以下をご参照ください。
【トリチウムの恐怖(前編)】
【トリチウムの恐怖(後編)】

●流入する地下水をどうするのか?
福島第1の1号機から4号機には、1日約1000トンの地下水流入があり、うち300トンが汚染水となって海に流出。400トンが建屋に流入して回収されタンクへ。残りの300トンは行方不明!
REUTERS【福島第1の汚染水、1日300トンが海に流出と試算=エネ庁】

地下水の流入を防ぐために、凍土壁という方法が俎上に乗っていますが、これは恒久的な対策と呼べるのでしょうか? 地下水の流入は、最低でも100年間は防がなくてはなりません。凍土壁は冷凍庫と同じ原理で、パイプの中を通る冷却液で、まわりの土を凍らせるもの。もちろん電気が必要です。こういった施設を100年間、止まることなく動かせると誰が約束できるのでしょうか?抜本的対策とは呼べません。またまた無駄な資金の投入になるだけでしょう。

福島第1を環境から切り離すという考え方は正しいでしょう。しかし造るべきは、絶対に100年、いや200年、300年耐える施設です。運用に資金や手間がかからないことも重要です。

●いつまで冷やさなくてはいけないのか?

続きを読む

[福島第1事故詳細]

コメント(全7件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット