『高浜原発再稼働差し止め仮処分』の読み方
2015-04-19


4月14日、福井地裁(樋口英明裁判長)が、関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の再稼働を認めない仮処分決定を出しました。再稼働差し止めです。仮処分とは、新たな司法手続きによってそれが覆されないかぎり、効力が有効だという、裁判所による重い決定です。

高浜原発再稼働差止め仮処分福井地裁決定要旨全文

●基準地震動とはなにか?
この決定で目立つのは"基準地震動"への言及です。
基準地震動とは、原発の地震に対する耐性を評価するときに用いる数値で、原発やその周辺で想定される最大の地震の揺れ(=地震加速度)のこと。加速度を表す"ガル"という単位を用います。
要するに、その原発が襲われうる最大の揺れ。その原発がある場所では、絶対にこれ以上の揺れはない、というのが基準地震動で、その値を超える耐震性がなければ、原発の稼働は認められません。

高浜原発3、4号機の運転開始時の基準地震動は370ガルでした。それが耐震補強工事なしで550ガルに引き上げられ、新規制基準の実施を機に、さらに700ガルに。特に耐震性を強化したわけでもないのに、いつのまにか当初想定していた地震の倍の揺れにまで耐えられることになっている…
大規模な耐震工事がなされたなら、少しは納得の行く方もいるかも知れませんが、基準地震動という数値だけが、スルスルと引き上げられていく。これは、仮処分決定が指摘するとおり「社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないもの」です。

ここでは、補足として、地震加速度について解説を進めます。
地震加速度とは、地震の揺れの強さを示す値で、ガル値とか最大加速度などとも呼ばれます(それぞれの原発で想定される最大の地震加速度が基準地震動)。
ギネスに認定されているこれまで最大の地震加速度は、2008年6月の岩手・宮城内陸地震の時に岩手県一関市で記録された4022ガルです。史上最大とか有史以来最大とは言えませんが、少なくとも人類が地震計を手に入れてから最大の揺れ。それが、この日本列島で記録されていることは重要です。

ちなみに、東日本大震災で記録された最大地震加速度は2933ガル(宮城県栗原市)、新潟県中越地震では2516ガル(新潟県川口町)でした。

その時、原発はどうだったのしょうか?
新潟県中越地震で、全原子炉が緊急停止、火災発生、汚染水が流出した柏崎刈羽原発。3号機で2058ガルという猛烈な揺れを記録しています。ここまでの数字を見ただけで、高浜の700ガルという数字がいかに楽天的なものか、お分かり頂けるでしょう。
推進派は「地質構造が…」「岩盤が…」という理屈を言いますが、日本列島はすべての場所で、1000ガル、2000ガルを越える地震加速度が襲ってきても不思議はない地震の巣。それを認めるのが科学的立場です。固い岩盤の上に建っているはずだった柏崎刈羽原発が2000ガルを越える揺れに襲われたのですから。
東日本大震災では、福島第1原発の立地する大熊町で922ガルが記録されています。しかし、なぜか東京電力が発表した原発敷地内の地震加速度は、2号機が550ガル、3号機が507ガル、5号機が548ガルでした(これらの値ですら、当時の福島第1に適用されていた基準地震動の1.15倍〜1.25倍ですが)。

さて、高浜原発に話を戻しましょう。基準地震動が、いつの間にか700ガルに引き上げられたことも大問題なのですが、仮処分決定では、原発推進派の権威である入倉孝次郎京大教授の言葉を引用して、基準地震動の数値自体がかなりいい加減だと指摘しています。
入倉教授曰く「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と。

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