イギリス、泥舟から逃げ出す
2011-08-04


他国の使用済み核燃料を受け入れているかどうか。実は、他国の分も請け負っているのは、フランスとイギリスだけです。フランスは、自国も核燃料サイクルやプルサーマルに積極的ですから、「ついでに稼ごう」という発想は分かります。ところがイギリスは、自国では核燃料サイクルにもプルサーマルにも取り組んでいません。イギリスの再処理工場とMOX燃料工場は、純粋に外貨稼ぎをするための施設なのです(かなり危険な稼ぎ方ですが)。そして、イギリスのMOX燃料工場の顧客は日本の電力会社だけです。

今回の工場閉鎖は、福島第1の事故を受けて、今後、MOX燃料の需要が激減、もしくはゼロになると判断した末のことでしょう。これは、ビジネスの問題です。
MOX燃料工場を管理する英国原子力廃止措置機関(NDA)は、「日本の地震と関連する事態がもたらす商業的リスクを分析した結果、将来的に英国の納税者に多大な負担をかけないためには、早期の工場閉鎖が唯一最善の選択肢」と明言しています。要するに赤字は出せないと。
この先、再処理工場も止める可能性が高いです。
プルサーマル以上にプルトニウムを効率的に使えるとされる高速増殖炉は、世界中どこの国でも、なんの見通しも立っていません(アメリカとEUはすでに計画を断念)。日本の「もんじゅ」は、事故に次ぐ事故を繰り返し、「廃炉に」という声が高まっています。
一方、プルサーマルも先が見えない。
プルトニウムもMOX燃料も、需要の見込みがないとなった今、イギリスにとって再処理工場とMOX燃料工場は無用の長物になりました。
イギリスは、核燃料サイクルという泥舟から、早々に退却することを決めたのです。

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