自然放射線を正しく知る(3)
2011-08-07


次にウラン系列(ウラン・ラジウム系列とも言う)です。
ウラン238は、放射線を出しながら、様々な放射性物質に変わり、最終的には鉛206に安定します。この過程をウラン238の崩壊系列、経由する放射性物質を孫核種と呼びます(詳しくはこちらへ[LINK])。

ほとんどが、半減期が短い元素ですが、ウラン234(半減期:24万6千年)、トリウム230(7万5千年)、ラジウム226(1600年)、ラドン222(3.82日)は半減期が比較的長いことから、自然界で存在が確認できます。
ラドン222以外は常温では固体である上、放出されるのは遠くまで飛べないアルファ線かベータ線が中心ですから、岩石中の中にある限りは心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。
しかし、体内に取り込むと深刻な問題になります。
自然放射線の範疇ではありませんが、どの孫核種も、ウラン鉱山などで粉じんとして体内に入った場合は、肺、膵臓、肝臓に発ガンの危険性が高まります。

ラドン222は常温で気体なので、大気中に広く存在します。世界で見ると10〜100ベクレル/立方メートルの濃度で、日本では平均13ベクレル/立方メートルとされます。アルファ崩壊なので、内部被ばくを考慮する必用があります。呼吸で肺に吸い込んだラドン222などから受ける被ばく線量は世界平均で1.3ミリシーベルト/年とされ、自然放射線による年間被ばく量=2.4ミリシーベルト/年の半分以上を占めます。
これも自然放射線の範疇ではありませんが、ウラン鉱山近傍ではラドン222の濃度が高まります。
日本では唯一のウラン鉱山があった岡山・鳥取県境の人形峠で、悲惨な事態になりました。多くの鉱山労働者を出した24世帯150人ほどの集落(鳥取県側の方面(かたも)地区)で、20年間で8人、28年間では11人がガンで死亡したのです。男性の肺ガン死亡率は全国平均の26倍になったそうです【参考サイト】。
アメリカでも同様の事態が起きており、アリゾナ州のレッドロックのウラン鉱山では、約400人の鉱山労働者(ほとんどが先住民)のうち約70人が肺ガンで死亡しています【参考サイト】。

自然放射線中で、もっとも問題視されているのはラドン222を吸い込んだ場合の内部被ばくです。ラドン222は絶対に増やしてはいけないし、ウランの採掘さえしなければ増えません。
そう!人類にとって、そして地球上の生物にとって、ウランは掘ってはいけないものなのです。地中にそっと置いておけば、深刻な被ばくを引き起こすようなことはありません。それをひとたび、人の手に収めようとした時、とんでもない悲劇が起きるのです。

トリウム系列に話を進めましょう。
天然放射性物質の一つで、岩石の中に含まれるトリウム232は、様々な孫核種(放射性物質)を経由して、最終的には鉛208に安定します(詳しくはこちら)。
孫核種の内、ラドン220以外は常温では固体で、ほとんどがアルファ線かベータ線しか出しません。ウラン系列同様、岩石の中にある限り心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。しかし、鉱山の粉じんなどで体内に入った場合は、内部被ばくが心配です。
唯一、常温で気体となるラドン220(トロンとも呼ばれる)は、半減期が55.6秒と短いので大きな問題はないと思われます(一部のサイトで、「ラドン220は大きな被ばく要因」とされているが、これは間違いでは…)。


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[自然放射線]

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