3.11以来、原子力発電の危険性に多くの人が気がつきました。しかし、いまだに推進派からは「より安全な原発を…」とか「原発が無くなったら日本経済は沈没する」といった発言が続いています。もう一度シビアアクシデントが起きたら、それこそ日本が沈没するのに…
今回は、「安全な原発はあり得ない」というお話です。
臨界とか臨界反応とか言いますが、これは連鎖的核分裂反応のことです。一つの原子に中性子が飛び込むことで、その原子が核分裂。その時に飛び出す中性子が、次の原子に飛び込んで… という反応が続きます。連鎖的核分裂反応を起こす物質は、ウラン235とプルトニウム239だけです。
上の図が、連鎖的核分裂反応の仕組みです。基本原理は原爆も原発も同じで、原爆の場合は、連鎖的核分裂反応が1億分の1秒という短い時間に起き、原発の場合は、反応速度を調節して、ギリギリ連鎖的核分裂反応が起きる状態(臨界状態)で、ゆっくりと反応を進めます。
図のように核分裂物質(ウラン235またはプルトニウム239)が二つに割れる時に出る中性子を即発中性子【prompt neutron】と呼びます。
臨界以下の状態では、生まれる中性子の数が足りず、連鎖的な反応は起きません。ところが、核分裂物質の「濃度」「大きさ」「形状」が、ある条件を満たすと臨界に達します。そうなると、今度は一気に反応が進むのです。マッチで花火に火を点けようとしても、なかなか点かないことがありますね。しかし、ある瞬間、一気に火が噴き出します。そんなイメージです。
「形状」で言うと、球がもっとも臨界に達しやすい形です。理由は、表面から逃げる中性子の数が少ないから。原爆では、通常爆薬の爆発力でウラン235やプルトニウム239を球形の一塊にし臨界点を超えさせ、急激な連鎖的核分裂反応(=核爆発)を起こします。
さて、原子炉を考える時、即発中性子だけで臨界に達してしまうと、問題があります。即発中性子は速度が速い上に、臨界を越えると一気にその数が増えます。即発中性子の数や、この時に起きる連鎖的核分裂反応を人間が制御することは不可能なのです。
逆に言うと、即発中性子だけで臨界点を超えてしまうと、原子炉は暴走し、そう簡単に止めることはできません。ガスレンジの火だけならガス栓を閉めれば止まりますが、その火が天ぷら鍋に入ってしまうと、そう簡単には消せません。それと同じです。
通常運転中の原子炉の中で飛び交っている中性子の99%は即発中性子です。では残りの1%は?
遅発中性子【delayed neutron】と呼ばれるものです。
核分裂によって生まれる核分裂生成物の中には、崩壊する時に中性子を放出する元素があります(バリウム87など現在までに45種類が知られています)。この中性子の放出は、核分裂から0.2秒〜1分くらい遅れて起きるので、遅発中性子と呼ばれます。
核燃料(燃料棒の束)の中には、出し入れの出来る制御棒があります。材料は、中性子を吸収しやすいカドミウムなど。遅発中性子は速度が遅いので、その数を制御棒によってコントロールできるのです。
もし、制御棒を引き抜き過ぎてしまうと、即発中性子だけで臨界点を超えてしまいます。これを即発臨界と呼んでいますが、要するに原子炉暴走。チェルノブイリは、まさにこの状態になりました。
いや、チェルノブイリだけではありません。人類はこれまでに少なくとも37回の臨界事故を引き起こしています。
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過去の臨界事故例1】
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