内部被ばく量や体内にある放射性物質の量を知るためには、今のところ、尿検査とホールボディカウンターが主に使われています。
いずれも万全ではないし、検査結果をどう評価すればよいのかも分かり難いものです。しかし、現状では他に頼るものがないのが事実です。
そこで、尿検査やホールボディカウンターでは、何が分かって、何が分からないのか… 結果をどう評価すればよいのか… ということを考えてみたいと思います。
●尿検査
まず、尿検査で出た放射性物質(ここではセシウム137)の検出値(尿中濃度)から体内残留量を計算する方法は、以下の通りです。
体重と放射性物質の体内実効半減期が分かれば、体内残留量が算出できますが、性別、個人差、体調などによって、数値が大きく変わる可能性があり、誤差は大きいと考えられます。
また、子供では成人よりも体内実効半減期が短いとされますが、何歳でどの位といったデータは、明確になっていません。
…とは言え、一応計算してみましょう。体重60kgの成人の尿から1ベクレル/kgのセシウム137が検出された場合、その時点での体内残留量は208ベクレルと推測されます。
ここでは、セシウム137を例にしていますが、ストロンチウム90ではどうでしょう?
ストロンチウム90の体内有効半減期は18年=6570日です。1日の排泄率は0.00011になります。もし、体重60kgの人の尿から1ベクレル/kgのストロンチウム90が検出されたとしたら、13650ベクレル(227.5ベクレル/kg)という大量のストロンチウム90が体内にあることになります。おまけに、ストロンチウム90は、ほとんどが骨に集まります。骨組織は人体の20%を占めていますので、実質的には、骨に1137.5ベクレル/kgの濃度で集積し、造血細胞にベータ線を浴びせ続けます。
ストロンチウム90が、尿中から検出されるようなことがあれば、かなり深刻な事態だと考えなくてはなりません。
主な放射性物質の体内実効半減期は、以下の通りです。
一応、尿中の放射性物質の濃度から、体内の残留放射性物質量を計算する式を作りましたので、どなたもご自由にご活用ください。ダウンロードしたZIPを解凍するとexcelになります。
尿検査評価計算式
●ホールボディカウンター
ホールボディカウンターは、体内から出てくるガンマ線の波長と強度を計測することで、体内にある放射性物質の核種と量を推測する装置です。
核種によって、放出するガンマ線の波長が異なりますので、波長が分かれば核種を特定できるのです。放射線の強度は、いわゆる線量(シーベルト)と考えてよいでしょう。ガンマ線の線量が分かれば、体内にある放射性物質の量(ベクレル)が推測でき、ベータ線による被ばく量も算出できます。
ホールボディカウンターは、崩壊する時にベータ線とガンマ線を出すヨウ素131やセシウム134、セシウム137に対しては有効です。しかし、ベータ線しか出さないストロンチウム90や、アルファ線しか出さないプルトニウム239を検出することはできません。
また、体内のどの部分から多くのガンマ線が出ているのかも分かりませんので、内臓や器官による放射性物質の蓄積の偏りも知ることはできません。
従って、ベータ線による被ばく量が算出できるといっても、あくまで全身均等被ばくに換算した値になってしまいます。実際には、ストロンチウム90は、ほとんどが骨に蓄積し、セシウム137は甲状腺や心臓で高濃度になります。
ホールボディカウンターでは、何ができて、何ができないのかを下にまとめました。
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