移住と除染
2011-11-23


福島第1原発が立地する大熊町。町全体が20km圏内の警戒区域に入り、町民全員の避難が続いています。
11月20日に町長選が行われ、「しっかりと町の除染を行い、住民が生活できる環境を作ることが最優先の課題」とする現職候補が、「いわき市などに町ごと移転」を公約に掲げた対立候補を破りました。
故郷を離れたくないという住民の気持ちは、痛いほど分かりますが、福島第1至近のエリアで、本当に除染によって生活できる環境が取り戻せるのか、大きな疑問があります。
一方では、漏出した放射性物質を少しでも環境中から取り除く除染は、絶対に必要なものです(本来は、東電がすべて行うべき)。空間線量を下げるだけでなく、内部被ばくを少しでも低減させるためにも、除染は必要です。

ここでは、ともすれば対立する考え方とされる「移住」と「除染」について、いくつかの視点から見直してみます。

●上乗せ分が年間1ミリシーベルトを越える地域では移住権を認めるべき。
現在、福島第1由来の外部被ばくが、年間20ミリシーベルト以下の場所では、住民は、住み続けるか、自費での避難・疎開・移住を選択することしかできません。
当方の計算では、年間20ミリシーベルトは、空間線量では毎時4.0マイクロシーベルトに相当します。年間被ばく線量は、3.11以前の自然放射線による外部被ばく線量の約48倍に達します。この環境に住み続けてよいわけはありません。
少なくとも、「チェルノブイリの移住権の基準=年間1ミリシーベルト(上乗せ分)」で、住民に無条件で移住権を認めるべきでしょう。「上乗せ分=年間1ミリシーベルト」は、空間線量で毎時0.34マイクロシーベルト(自然放射線込みの数値)になります。それでも、3.11以前の7倍の空間線量なのです。

ただ、移住権エリアであっても、除染は進めるべきです。それは、当面暮らし続けるための除染というよりは、福島第1から放出された放射性物質を回収するための努力と考えるべきでしょう。

●除染は「放射性物質を環境から隔離する」が原則
「放射性物質による環境汚染と除染のイメージ」を図にまとめてみました。
禺画像]

除染と言われて、真っ先に思い浮かぶは、汚染土壌をビニール袋に詰めて山積みにしていく風景か、高圧洗浄機で道路や屋根を洗い流している風景です。
このうち、汚染土壌の方は、各自治体とも保管先に腐心していますが、基本的には、「仮置き場→中間処理施設→最終処分場」という流れで、環境から隔離することができます。
洗浄水はどうでしょうか?一部の都市部を除けば、ほとんどが河川や海に流れ込んでいきます。これでは、放射性物質を環境から取り除いたことにはなりません。ピンポイントの除染では、屋根の洗浄は欠かせませんが、原則は「放射性物質を環境から隔離する」ことだと理解しておかないと、放射性物質の拡散を招く恐れがあります。下水施設のない地域では、河川に流れ込んだ放射性物質を回収する方法を考える必要があります。

一方、ゴミ処理所の焼却灰や下水処理場の汚泥に、高濃度の放射性物質が集まることが問題視されていますが、これは、不幸中の幸いと考えるべきでしょう。灰や汚泥に集まらなかったら、いつまでも、環境中にあるのですから。中間処理施設を早急に建設し、汚染された灰や汚泥を環境から完全に切り離すことが先決です。

●森林や農地の除染は本当にできるのか?
仮に、住宅地の除染がある程度できたとしても、森林の除染は容易ではありません。
国は、住民に「高濃度に汚染された森林と面と向かって暮らせ!」と言うのでしょうか?森林から流れ出る水はどうするのでしょうか?森林と人の生活圏との間を行ったり来たりする野生動物をどうするのでしょうか?解決の術は見当たりません。

続きを読む

[除染]
[避難・移住]

コメント(全9件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット